間違えた問題すべてを見直すことはできない

間違い直しこそ、最良の学習

算数の学習を大雑把にとらえると

  1. 問題演習
  2. 答え合わせ・間違えた問題の解説を聞く〈読む)
  3. 間違えた箇所は解き直して、身に付いたかどうかを確認

これを延々とやり続けていくことになります。
余裕で解ける問題を何度も何度も解くことにあまり意味はなく、間違えた問題をできるようにしていくことに意味がありますので、あらゆる教師が「解き直しの重要性」を訴えます。

間違えた問題を解き直すという学習はまぎれもない「正解」で、これ以上の学習方法はおそらくないと筆者も思います。

塾に通われている場合、日々の学習において、次から次へと新しい問題を解いていくことになると思います。
これらの問題の中で、余裕で解けなかった問題をファイルして取っておき、少し間をおいてから再度解き直しをしてみることで、定着したのか、していないのかを確認。定着していればファイルから外す。
これが理想の学習サイクルと言えるでしょう。

中学受験名物「消化不良」

ただし、この学習サイクルで破たんしてしまう生徒がいることを私は知っています。
多くの保護者から相談を受けてきたからです。
どのような生徒が破たんするかというと、解き直しをしても間違う問題が多く、やらなければならない問題が減っていかないケースです。

1度解き直しただけで完璧に身に付く問題もあれば、
2度、3度と解き直しをしても、再度間違えてしまう問題もあることでしょう。
再度間違えてしまう問題が多い場合、身についていない問題=再度の解き直しが必要な問題ばかりがたまっていって、不良債権の海の中で遭難します。
しかも、次から次へと塾で新しい問題が出され続けていくのです。

これがいわゆる「消化不良」という状態です。

この消化不良状態にならないために、どのように学習を進めればよいのか、これこそが本稿の主旨になります。
ずばり本稿のタイトル通りなのですが、

【間違えた問題のすべてを見直すことはできない】

という事実を受け入れましょう。
授業で大量に与えられる問題、月に1度の大テスト、6年後半ならば過去問・・・
それぞれ間違えた問題の見直しをしていくべきでしょう。
しかし、やみくもに解き直しをするべきではありません。
大量の問題の海の中で遭難しないためには、羅針盤が必要です。

遭難しないための道しるべです。

それは、

  • 間違えた問題のすべてを見直すことはできない
  • 間違えた問題のすべてを身につけなくてもない
  • 出会ったすべての問題が解けなくともよい

という割り切り、諦念を持つことです。

学習者それぞれで、取り組むべき価値のある問題は異なります。
「精一杯がんばって解ける」という問題を「余裕で解ける」という状態に持っていくための勉強が最も効果的です。

算数は徹底的な積み上げ科目です。
跳び箱の7段が跳びたければ、6段を余裕で跳べるように練習すべきなのと同じことです。
段階を追って練習していくしかありません。
必ず6年の2月までに10段を跳べるようにする、という目標があったとして、その練習方法に抜け道や近道はありません。「1つ1つこれは余裕で解ける」のレベルを上げていくしかありません。急いで8段、9段をお子さまに詰め込んで、かえって効率の悪い学習になっているケースはそこら中で多発していると思います。

今の自分にとってマッチしない問題(難しすぎる)ならば、出会ったすべての問題が解けなくともよいという姿勢で一旦保留します。

数か月後に再チャレンジできる程度に自分がレベルアップできるか、それともその問題を解き直すことがなく中学入試が終わるか、それは結果論にすぎません。

塾は不足をおそれ、過剰に課題を与えがちである

我が子にとってぴったりのレベルの問題だけがピンポイントに投入し続けられる塾なんてないことは容易に想像できると思います。非常にレベルの高い家庭教師であれば、過不足なく問題を与えることができるかもしれません(完全に過不足なくというのは無理だと思います)。

やや過剰な問題量にさらされているケースが大半でしょう。
消化不良にならないために、解き直しをすべき問題に優先順位をつけましょう。
「精一杯がんばって解ける」
「なんとなくわかりそう」
くらいの問題が優先度1位です。これらが「余裕で解ける」という状態になることが大切です。

「これは今の自分には無理そうだ」
という難問は、余裕だと思えることのレベルが上がることでしか自力で解けるようになりません。急いで手をだしても、あまり学習効果が望めないことが多いです。
解説を聞いても(読んでも)、手も足も出ないならば、その問題に時間をかけてはいけません。学習効率が極めて悪いです。

やりきれなかった問題を悔やむ必要はありません。
逆に、きちんとこなすことのできた問題たちを誇りに思いましょう。
大型書店に行けば、何万ページもやっていない算数の問題が残っていますが、それを不安がる人はいませんね。
お通いの塾の教材もいっしょです。
コアである基礎の土台に抜けがあってはまずいですが、他の問題は抜けがあっても構いません。
他の問題は、基礎の土台を組み合わせて作られただけだからです。
何問かやらないままになったとしてまったく問題視する必要はありません。

中学受験算数をすべて身につけることは不可能

算数は究めようと思えば、果てしない道のりですし、難しい問題を際限なく新しく作れます。

しかし、小学生が6年生の卒業まで、という期間限定で到達できるレベルなどたかが知れています。
やや難しい問題群は、ほとんどよく分からない、という状態で中学受験を終える生徒が大多数ですし、それで構いません。
難関校では「こんな問題は誰も解けないだろうな」という難問が大問で1つくらい出題されることが多いですが、このような問題まですべて身につけたいと願うご家庭もあるようです。
しかしそれは、小学生に多くを望みすぎています。
分不相応に詰め込むと、中学進学後の成長に悪影響だってありえます。

また、中学受験の算数の難化がやや過熱しすぎている大人側の事情もあります。

算数は標準的な定番問題を、正確に短時間に解けるようになればそれでいい。
間違えた問題のすべてを見直すことなどできないし、それでいい。

この言葉をすべての保護者様、受験生に届けたいと思います。
標準的な定番問題を、正確に短時間に解ければ、それで難関校に合格ができるのは厳然たる事実です。

大量の問題の海で遭難されないよう願っております。

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