式の意味と抽象化 その2 消去算
つるかめ算は連立方程式で解かないのはなぜなのか。
前記事でその一面を解説しました。
ところが4年生から5年生にかけて、消去算という名の連立方程式そのまんまの特殊算が指導されます。
このようなものです。
りんごとみかんで25円
リンゴ2個 と みかん4個で 76円
みかん1個はいくらですか。
金額が安すぎますね。
これは先のつるかめ算と対比させるため設定です。
数値は本質的なことではないので気にしないで下さい。
この問題を立式すると
りんご1個がX円、みかん1個がY円ならば、
X+Y=25・・・・・①
2X+4Y=76・・・②
となります。先のつるかめ算とまったく同じ方程式です。
【確認】先のつるかめ算で方程式をたてると以下のようになります。
X+Y=25 つるXとかめYで全25匹
2X+4Y=76 つるの足とカメの足を合わせて76本
見た目にはまったく同じ連立方程式です。
先のつるかめ算においては、足の数から動物の数は引けないから、という理由で
意味を考慮しながら解くには連立方程式は不向きであることを確認しました。
ところで、今回のりんごとみかんではどうでしょう。
①式を2倍すると
2X+2Y=50
これはりんご2個とみかん2個で50円
という意味で、
②式との差をとることの意味が、小学生にも理解できます。
抽象化は一切ありません。
②式と、この①式の2倍の差をとることの意味が、小学生にでも理解可能です。
ですので、この消去算は学習初期(大手塾では4年生であることがほとんど)
に指導されますし、子どもたちも苦労なく身につけていきます。
消去算は連立方程式そのまんまの見た目をしています。
解き方も同じです。
しかし、消去算と連立方程式は完全に同じものではありません。
消去算には抽象化の余地がまったく無いからです。
消去算という、小学生にもわかるような意味と実感を伴った具体的な問題を通じて、
小学生は連立方程式の計算技術の一部を習得します。
学習が進み、比・割合という具体的個数から離れた数量を扱うようになって、
本格的に方程式と同等の計算処理に入門していくことになります。
※このレベルまでやらない子どももいます。
消去算が連立方程式と同等と考えられているからなのか、
中学受験において「結局は方程式で解く」という問題がふつうに出題されています。
しかし、現在大手進学塾で、方程式を中学生に教えるように体系的に指導するカリキュラムを採用している塾はありません。
今後も大手塾において、方程式を全面的に指導するカリキュラムを採用することはないでしょう。
「4年生につるかめ算を教える」
このことから算数世界に入門してもらうのが今までのカリキュラムです。
とりあえずうまくいっているこの学習方針を、大きく変える冒険をしようとはしません。
もちろん前述した抽象化も懸念されるからですが、現行のカリキュラムで大問題も発生していない以上
あえて変える必要はないと考えられているからです。
どこかで、方程式を全面押しする新興勢力が現れて、その塾が成果を上げるようなこととなれば、世代交代となるかもしれません。しかし強者(大手塾)が自ら変革することはありません。
筆者は、現行の指導を支持しますが、大手塾の方程式の指導に対しては大いなる欠陥を感じています。
算数世界から入門していくところに問題はありませんが、その後方程式に移行していく過程がずさんだからです。
この点で苦しんでいる非常にたくさんのお子さま、ご家庭を目の当たりにしてきました。
方程式を無理なく、すんなりと身に着つけられるようにすること。この改善策を世に提示することが、当サイト執筆の大きな動機です。
現在作成中の教材にご期待ください。