1:全体に対する割合
1:全体から見て、その部分がどれくらいなのか
さて、割合の基礎学習もこれで最後の単元だ。
いよいよ割合マスターですね!
マスターにはまだなれないけど、基礎はすべて終了だ。
基礎ほど大事なものはないからね。
さて割合は、AはBのP倍、という見方だと教えてきたんだけど、その中でも特に、
全体から見て、その部分は何倍か、という見方がよく使われるんだよ。
何のことだかわからないです。
そうだね、さっそく具体例で見ていこう。
多くの塾、学校において割合の指導はこのステップから入ります。
日常生活において割合とは「全体から見て、その部分は何倍か」に着目することが多いからでしょう。
割合とは、「全体(もとにする量)」を1とするものの見方です。
例えば「BはAの6割だ」とは、全体Aを1として扱うのであり、これを比で表現すると、
A:B=1:0.6
のようになります。
AとBのどちらを1とするのか、文章で決まります。
しかし、比の世界においては、全体を1としてみるという制限はありません。
A:B=5:3
です。
「割合」とは、より広い世界を扱う「比」の運用の一部分にすぎないのです。
ですから、
「より広い世界である比の運用を先に教えれば、その一部である割合もなんなく習得できる」
これが当サイトの指導方針です。
そして、比の運用とは、結局は分数のかけ算の運用のことであり、「比」を全面に打ち出さなくともその本質的指導は可能です。
長々説明してきましたが、結論を言えば「分数の計算がすべて」ということです。
導入例題
ある中学校の吹奏楽部の部員は全部で72人、そのうち女子は36人です。
同じ中学校の演劇部の部員は全部で30人、そのうち女子は24人です。
どちらが女子が多い部活でしょうか。
解説
なんなの、この変な問題。
もちろん、女子が多いのは吹奏楽部です。
36人と24人では、36人の方が多いに決まってます。
そうだね。もちろん正解だ。
しかし、「女子が多い部活」とは別の意味もあるでしょ。
「女子だらけで、男子が少ない部活」という意味だ。
2つの部を下の表のようにまとめてみる。
吹奏楽部は男子と女子が同数だ。
一方、演劇部は女子だらけの部活であることが分かる。
男子はあまりいない部だ。
それぞれの部活が、どれくらい女子だらけなのか(女子があまりいないのか)をきちんと数値で明らかにしたい。
ここで割合が大活躍するんだよ。
割合は2つのものが何倍なのかってことですよね?
そうだね。今回は、「全人数の何倍が女子なのか」という視点なんだ。
吹奏楽部はどうかな?女子と全体を比べると・・・?
吹奏楽部は全部で72人いて、その半分が女子です。
その通り!!
「半分」というのは、そもそも全体との比較を考えている言葉だよね!
全体の0.5倍(\(\displaystyle \frac{1}{2}倍\))の量を半分という。この言葉を知ったのはいつかな?
このときからすでに割合の学習をしていたってことなんだよ。
「半分」は、幼稚園くらいから知ってるかもね。
「半分」のように、全体に対して何倍だろうか、という考え方は日常的によくする考え方だよ。
さて、この見方で2つの部をまとめてみるよ。下図のようになるね。
この「~倍」を、「全体に対する女子の割合」といいます。
この聞きなれない言い回しをしっかりと覚えようね。
ただし、このような言い回しで問題が出題されることは頻繁にはありません。
だからといって、知らなくていいとは言えませんが。
吹奏楽部全体に対する女子の割合が0.5である
演劇部全体に対する女子の割合が0.8である
このように言います。
なんだかずい分堅苦しい言い方だな。
そうだね。あまりこの言い方は出てこないんだけれど、
出てきたときに意味が分からないでは困ってしまうから、
わかっておこうね。
吹奏楽部全体の0.5(倍)が女子である
吹奏楽部全体の50%が女子である
吹奏楽部全体の5割が女子である
吹奏楽部全体の1/2が女子である
演劇部全体の0.8(倍)が女子である
演劇部全体の80%が女子である
演劇部全体の8割が女子である
演劇部全体の4/5が女子である
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倍は通常省略されます。様々な言いまわしに慣れていきましょう。分数で表現することがとても多いです。
さて、どれくらい女子だらけの部活なのかは、割合を見ればわかります。
割合の数値が大きいほうが女子だらけだよ。
もちろん演劇部のほうが女子だらけの部活です。
0.5と0.8では、0.8の方が大きいですからね。
割合の数値が0.5だと、半分なんだね。
とても良い視点だね。
ところで、もっとも女子だらけな部活ってどんな部活かな。
バトン部です!!全員女子です。
男子がバトンをやってるケースもあるんだけどね。男子新体操とか知ってる?知らなくてもいいか。
全員女子というのが、一番女子だらけな部活だね。
逆にもっとも女子が少ない部活は?
男子ラグビー部です!
そうだね、ラグビーやってる女子もいるだろうからね。
でも男子ラグビー部なら、男子しかいない部だね。
全員が女子のとき、その割合は1だ。
「全体」に対して「全体」の割合は1、
全体×1=全体
ですからね。
以下のような言い方になる。
バトン部全体の1倍が女子である
バトン部全体の100%が女子である
バトン部全体の10割が女子である
逆に、まったくいないとき、その割合は0だね。
割合は0から1の間になるんだ。
でも、「今日の入場者数は昨日の入場者数の1.25」
っていうのを前の回で見たよ。
これは割合が1をこえてるよね?
うん。それはそれでいいんだ。割合が1.25になって何の問題もないよ。
今日の話題は、「全体に対する部分の割合」の話だよ。
この考え方のときは、割合が0から1の間になるよ。
全体から見て、その部分がどれくらいなのか、ということだからね。
ここで混乱が起きるようであれば、あまり深入りしなくて大丈夫です。
結局は、2つのものが何倍なのか、という計算ができればそれでよいからです。
また、そのような問題にたくさん触れることでしか、割合の感覚は入らないからです。