ありとあらゆる事柄を、逐一自ら創造する必要性などない
解法を暗記してよいのか、悪いのか。
悪いわけがない、解法は暗記すべきである。
これが筆者の主張です。
例えばこんな状況を考えてみてください。
ある子どもが、ある問題を読んでこう思いました。
以前に経験した問題の類題と出会ったときのことです。
「えーっと、ぼく、この問題やったことがあるから、解き方知ってます(暗記してます)。ぼく、暗記で算数と向き合っていて、悪い学習でしょうか・・・?」
悪いわけがありません。
むしろ、
「以前に経験したあの問題とこの問題が同じ仕組みの問題だってわかるんだ!この子は算数のセンスがあるぞ!」
と褒めるのが正しいです。
算数はどうやって学習を進めて行く科目なのか。
どうやって上達してく科目なのかと考えると以下のような流れができます。
- 基礎の積み重ね
- 基礎の積み重ねを広く適用・運用していく
ありとあらゆる事柄を、逐一自ら創造する必要性などないし、逐一証明していく必要もありません。
もちろんそんなことできるわけもありません。
代表的な解法をきちんと理解し、他の問題にも適用できるように訓練する。
これが理想的な算数教育であると断言します。
多くの教師が矛盾に気づいていない
ここまで読んでいただいて、算数における解法の暗記の必要性は十分伝わったと思いますが、最後に決定的ともいえる事例を挙げて本稿を締めたいと思います。
N角形の対角線の本数を求める公式:(N-3)×N÷2についてです。
この公式は、普通進学塾において以下のように指導されます。
- 公式は暗記しておくべき。
- なぜこの公式になるのか、その論理を理解・暗記しておくべき。
- 論理を理解・暗記すれば、もし公式そのものを忘れたとしても、入試の現場で、自ら導出できる。
ではこの公式の導出論理をおさらいしてみましょう。
N角形の1つの頂点と、他の頂点を結ぶと「対角線」となりますが、
- 自分自身には引けない
- 隣あう2点とは、「辺」になる
よって、1つの頂点から(N-3)本の対角線が引けます。
N個の頂点から(N-3)本の対角線が引けるので、
総数はN×(N-3)となりそうだが、
すべての対角線を2回ずつ数えていることになるので2で割る。
よって、N角系の対角線の本数は(N-3)×N÷2となる。
この公式の導出原理を、「理解・暗記」しろと指導されるのです。
「暗記」です。
いわゆる解法暗記否定派の教師も、暗記しろと指導します。(暗記という言葉を使わないかもしれませんが。)
ところで、この「公式の導出論理の暗記」と「代表的な問題の解法暗記」と一体何が違うのでしょうか?
十角形の対角線の本数は全部で何本か、という代表的な基礎問題があり、この問題の解法を暗記するのと、公式の導出論理の暗記とは何が違うのでしょう。
本質的な差はないことお分かりいただけるのではないかと思います。
算数において、汎用的に使用するものの考え方はどんどん暗記(理解を伴って)していくべきです。
この公式導出論理は暗記しろ、と指導し、文章題の解き方は暗記するな、と指導すること。
このような大いなる矛盾が、他単元の指導でもなされていないか、精査してみる必要性があると思いませんか。
我々教師自身が、どのように頭を使って問題を解いているのか、どのように算数を捉えているのか。
きめ細やかに、分析していくことが必須なのです。
カンガループリントはこのような視点で全単元を洗い出すことで、今までには無かった、使いやすい、わかりやすい教材を作成しています。