つるかめ算って、ただの連立方程式ですよね。
なんで、まどろっこしく「つるかめ算」で教えるんですか?
小学生に方程式を教えることの是非については、他コラムで書いている通りです。
なにが良いのか悪いのか、絶対的な答えはありません。
本稿では、
小学生に方程式を積極的に教えたくない理由の大きな要因の1つを解説します。
それは、
「意味の伴った計算処理」と「機械的な計算処理」
の違いについての考察によります。
つるとかめが合わせて25ひきでその足の数は全部で76本だとします。
つるとかめは何ひきずついるのでしょうか。
まずは方程式で解くとどうなるかを見ておきましょう。
つるがX かめがY いると
X+Y=25・・・・・①
2X+4Y=76・・・②
ここから先は、意味が剥奪された抽象的な計算技術の世界です。
①式を2倍して、②式との差をとります。
2X+2Y=50・・・①×2
2X+4Y=76・・・②
差をとって、2Y=26
Y=13
あとは、①式に代入すれば、X=12
も得られます。
つるが12ひき(羽)、かめが13ひきとなります。
連立方程式のおさらいでした。
これを4年生にいきなり教えるのは好ましくないだろう、
という考えが
現在の中学受験塾の大半の考え方です。
4年生には抽象的すぎるだろうというのが根拠です。
自分が計算したものは何か。
この計算で何が求まるのか。
小学生には、このように意味を考えながら解き進めさせたいのです。
抽象的な計算技術を習得させたとしても、なにもわかっていないスカスカの結果しか残らないのではないか?
育的効果は望めないのではないか?
このようの懸念されているのです。
先の連立方程式を考察します。
①式を2倍するという操作の意味を考慮するならば、
これは、つるもかめもはじめの2倍いれば、全部で50匹 という意味です。
つるがX かめがY いると
X+Y=25・・・・・① 全部で25ひきという式
2X+4Y=76・・・② 足が全部で76本という式
2X+2Y=50・・・①×2 はじめの2倍いれば、全部で50匹という式
式の意味を考慮すると、②式から①×2を引くことはできません(躊躇われます)。
なぜなら、76本の足から50匹を引いて26などという計算は許されないからです
26本なのか、26匹なのか、単位の揃っていないものの引き算など無意味です。
注 76mから50gを引けないようなものです。
「この計算で何が求まっているのか」
これを1つ1つていねいに追いかけながら、問題を解き進めていく力。
小学生が伸ばすべき力は、間違いなくこれであるべきだと考えられています。
ではこの問題はどのように小学生に指導されているのか。
いわゆる「つるかめ算」と呼ばれる計算として指導されます。
つるかめ算とはどのようなものかというと、実は連立方程式と大差はありません。
ただし、
①式を2倍することで得られた
2X+2Y=50
は
”もし25匹(=X+Y匹)、全部がつるなら、足は50本” という考え方から得ます。
算数においては、徹底的に意味を考慮しながら考えを進めていきます。
これなら76本-50本=26本です。
この26本の差は、もし25ひき全部がつるならば、という仮定からでた差なので・・・
このように解き進めていきます。
続きは本稿では割愛します。
中学受験においては、最終的には小学生にも抽象化の能力を身につけてもらうことになります。
しかし、上記のような理由もあり、学習初期からいきなり方程式という指導は教育的に良くないだろうと考えられています。
注 はじめから方程式を教えるのは絶対にダメだと言いきれるのか。
果たして抽象化についてこられる小学生はいない、といえるのでしょうか。
理解できる小学生ももちろん一定数いることでしょう。方程式を完全否定することはできません。