文章を図によって整理するということ
学習初期(幼児、低学年のころ)、算数の学習は必ず図と計算がセットであったはずです。このときの図をないがしろにしてはいけません。この基礎の重要性からスタートしていきましょう!
今まで小学校(主に低学年~中学年まで)で取り組んできた文章題は、文章にでてきた数を、足し算なのか引き算なのかわり算なのかかけ算なのか、それを考えて計算するだけで回答できるものが大半だったと思います。
しかし、これからはより複雑な問題設定の文章題に取り組んでいきます。
文章を読んで、状況を整理することが必要になります。
この問題文を整理する力、状況を把握する力を養うことが、
算数の実力アップの最大のポイントの1つとなります。
しかし、状況を把握していないうちに問題文中にでてきた数をなんとなく組み合わせて計算する。
このような子は、非常に多いのです。
問題を整理するという経験がまったくなく、「算数とは式をかいて計算すること」と思っています。
違いますね。
算数とは仕組みを考えること、構造を把握することです。
そんなかしこまった言い方はやめましょう。
算数とはパズルです。
なんとなく計算する、そんな無味乾燥なつまらない科目ではありません。
パズルを解く楽しみ、パズルを解くことで得られる論理力、このようなものを育んでいきましょう。
注 もちろん、計算を軽視してはいけません。
2.やや複雑な算数の文章題に取り組むさいどのように頭を使うのか。
上記の通り、問題文を読んで状況を整理、把握することが第一です。
複雑な設定で状況把握が難しければ、図や表にまとめることが必須です。
その中で
→ 単純に計算するだけの箇所は計算して求める。
→ つるかめ算や消去算などの特殊算が必要な箇所があれば、それを利用して求める。
これらを組み合わせて、2段階、3段階と解き進めていくことになります。
上記の手順の中で、最も大切なのは状況把握です。
中学受験算数とは つるかめ算を代表とする特殊算のオンパレードと誤解されている方も多いと思いますが、特殊算そのものを習得することは特別難しいことではありません。
多くの子が算数で苦しむのは、複雑な設定の問題を整理して、解きほぐしていくことができないからなのです。入試や実力テストにおいて、この問題は「~算」で解けますよ、というヒントはありません。問題に応じた整理ができるか、適切な図がかけるか、これが大事なのです。
例えるならば、方程式の立式です。機械的に解くだけなら、計算ルールの暗記だけでできます。問題文から、方程式を立式することこそが難しいのです。
1:文章をそのまま図にする。「具体図」
例題1
りんごを4個買ったところ、全部で640円でした。1個いくらですか。
これは簡単だよ、640÷4=160 答えは160円!
うん、正解だね。
これからもっともっと複雑で難しい問題をやっていくからね。
そのための準備のためにこの問題からはじめることにしたんだ。
では、この問題を図にすることはできるかな?
図?なにそれ?
よし、じゃあ見ててね。
こんな図だ。
ところで、この問題を解くために、「640÷4という計算をすればいい」
というのはどうしてわかったのかな。
そんなこと言われても、わかるものはわかるよ。
簡単であたりまえだから・・・?
うん、そうなんだけど。
学くんが「簡単であたりまえだ」って言うのは、この問題が上のような図であることが「簡単であたりまえ」だってわかるからなんだよ。割り算を習ったときに、その意味を上のような図で教えられているはずだよ。
そうかも。そうなのかな。
そうだよ。しっかりと理解したことだから、今はいちいち図にしなくても、問題をさらっと解くことができるようになったんだ。
「図をかかないでも問題が解ける」というのは、例えるなら暗算で解いているようなものなんだ。
暗算って、頭の中だけで計算することだよね。
でも、ぼくは640÷4を筆算したよ。
例えだよ。図はかかないで、頭の中だけで済ませたでしょ。
図に関していえば、暗算みたいなものだ。
ところが、問題が難しくなると、図をかかないで解くこと(暗算)はかなり難しい。
図をかかないで解くことは無理と言ってしまってもいいくらいだ。
987×45を暗算できないみたいに?
そんな感じだよ。
計算問題も、文章題も、とても簡単で単純な問題だと「暗算」で済ませられるね。
でも、複雑な問題は、頭の中だけではとても解けない。
そんなときは「暗算」しないで、どんどん紙の上で解いていこう。
文章題を図にする、というのは、暗算では解けない問題を筆算するみたいなものなんだ。
この図のかきかたは、とても大切なんだけど、
あまりきちんと教えられていないようだ。
これをどんどん学んでいくよ。
図をかく、か。どんなことをするのかよくわからないや。
順に教えていくからね!
例題1ー2
1個140円のシュークリームを何個か買いました。すると全部で980円になりました。何個買いましたか
簡単!
980÷140=7
7個です!
まあ、正解なんだけどね。
なんでこの問題を出題しているかは、図をかく練習のためなんだ。
これほど単純な問題で、わざわざ図をかいて整理する必要はないよね。「暗算」で解いてしまえばいい。
でもね、今はもっと難しい問題に立ち向かうための図の練習をしようと思うよ。
この文章題を図にしてごらん。
シュークリームの絵・・・どうやってかけばいいんですか?
〇でいいよ。絵じゃなくて図なんだ。
省略してかかないと時間がいくらあっても足りないよ。
こうかな。
シュークリームが7個かいてあるけど、それはどうしてわかったの?
980÷140=7 です。
まったくその通り、正解なんだけどね。
この問題を解く前段階の図、まだ何個あるのかわからない、そういう図をかいて欲しかったんだ。
こんな図だよ。
〇を何個かけばよいのかわからない、そういうときに「・・・」で表すんだ。
この「・・・」の部分に5個あるのか10個あるのか、それはまだわからない、という図だよ。
そして、シュークリームは1個140円だよね。
その情報も入れた図にしたい。こんな図になるよ。
140が何個かあって980円になったという図ですね。なるほど。
そうだね。
図は、問題文を書きかえて、目でみてわかるようにするためのものなんだ。
「・・・」という表現はとても便利なんだよ。
何個あるかわからないときに使えるし、さらに
「1個140円のシュークリームが20個ある」という図をかくときにも力を発揮する。
上図のようにかいてしまえばいいんだ。実際に20個かいても、ちっとも分かりやすい図にはならないからね。
このように、「リンゴとかシュークリームとか、そういうものが何個かある」というとき、今までかいてきたような図をかくことで問題文を整理することができるよ。
このような図を、先生は「具体図」とよぶよ。
とっても具体的な図だからね!
非常に単純な問題において、このような図をわざわざ書く必要はありません。
書かないで解くのは、いわば暗算をしているようなものです。
暗算可能な問題は暗算すればよいのです。
しかし、やや複雑な計算を暗算することが難しいように、複雑な文章題を図を書かないで頭の中だけで解くことはかなり困難です。
どんどん図示をしていきましょう。
多くの子どもが、図示による問題文の状況整理をせずに、ただひたすら計算だけをして解けない解けないと苦しんでいます。
計算式しか書いてはいけない、とか
頭の中だけで解かなくてはいけない、などという規制はありません。
しかし多くの子どもが上の2つの足枷を、頑なに自分に課しているかのようです。
また、線分図はかけるけど、上のような図をかけない子が非常に多いです。
このような図示には「~図」という名前がついていません。
それだけ低い価値だし、指導もされてないということでしょう。
当サイトではこの図を「具体図」と名付けます。
極めて具体的な図だからです。
極めて具体的であるため、抜群の分かりやすさをほこる図です。
この具体図がかける問題では、どんどん書いていきましょう。
いずれ具体図では表現しづらい問題にも出会います。
そのときに、より適切な他の道具を学んでいくことになります。